ニセコクラシックコース後半

蘭越から20km離れた村落で、長尺のキセルの灰を払うと、昨今たまに訪れる観光客の相手を生業とするエカシは誰に伝えるともなくこう語る。


モシリの地に迎えられたければ、先ずはクライマーになることじゃ。ふむふむ…。


そんな事は誰も言ってネーけど、ニセコクラシックでレースがしたければ、クライマー能力は必須だ。

コース後半でいよいよその力を試される。

スタートしてから幾つもの上りを越えてきたが、本格的な勾配は後半に固まっていると言っていいだろう。


体力は既に力尽きていた。海産物屋を過ぎてから、コンビニはおろか自販機すら無い。

残り30kmくらいから無慈悲な上りが始まる。それらも幾らか忍んで、ガーミンの示す走行距離は間もなく150kmに近づく。


自身がチャリにハマってのち、ハンガーノックと言うモノを知って、またそれらしきモノを何度か体験してきたが、今ではそれらは最早それらしきモノでしか無い。 

リアルノックの漕げなさっぷりはメートル単位にまで落ち込む。

ガーミンは既に155kmを示しているが、最終アタックポイントと思われるローソンのあるヒラフの目抜き通りも一向に訪れる気配が無い。依然畑と草原が広がる中、寒気と眠気が我を襲う。


あわやのところ土木現場の片隅に自販機を見つけた。

救われる。


例のローソン迄たどり着いたら、ゴールをシカトして宿のペンションに向かった。


おやすみなさい。